いないことにされた人たちの集落

かつて善光寺のそばには、身分の低い者や、病気によって村を追い出された人たちの集落があった。身分の低い者たちは、善光寺ならきっと受け入れてくれるという思いを胸に、ここまで歩いてきたのだろう。病気の者たちは、「お参りすればきっと治る」、「極楽浄土でこの苦しみから解放されたい」、そんな気持ちを抱えていたかもしれない。

彼らは街道を歩いて善光寺にたどり着き、いつからか集まって生活をはじめた。そして、次第にいくつかの仕事を担うようになっていったという。ある者は寺に出入りする商人と税金のやりとりをし、またある者は途中で行き倒れた参拝者の弔いを手伝った。

本堂周辺の灯りの管理を任されていた者もいたそうだ。お盆の時期、本堂の前で迎え火をたくのも彼らの仕事だった。彼らが暗闇に灯した火が、参拝者を、先祖の霊を導いていたのだ。他の場所ではいないことにされた人々にも、善光寺では役割が与えられていた。

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