阿弥陀様の歓迎を受けた源頼朝

鎌倉幕府の将軍・源頼朝は、善光寺に強い信仰心を抱いていた。善光寺が火事にあった時、建て直しを命じたこともある。表参道には、頼朝が参拝した時の逸話がいくつも残っている。ここ十念寺に伝わる物語もそのひとつだ。

善光寺を訪れた頼朝が、門前町に差し掛かった時のこと。どこからともなく美しい音楽が聞こえ、あたりに甘い香りが漂った。ふと西の空を見上げると、紫色の雲がわき上がり、まぶしい光とともにこちらへ近づいてくる。目を凝らすと、光の中に阿弥陀様が佇んでいた。

頼朝と家来は馬から降りて、阿弥陀様を拝んだ。「ナムアミダブツ、ナムアミダブツ」、そう阿弥陀様が唱えはじめたので、頼朝たちも後に続く。念仏を10、念じ終えると、阿弥陀様は光とともに去っていった。そして、あたりは何事もなかったかのように元通りになった。

しばし呆然としていた頼朝は、はっと我に帰る。阿弥陀様が、自分を歓迎してくれたのだ。感謝の気持ちで、頼朝はここに寺を建てることに決めた。それが、この十念寺。このため、寺の入り口の柱には「紫の雲」「頼朝」という文字が刻まれている。

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