目に映る風景を言葉で スケッチして見る

新宿御苑のはじまりは、内藤家が武家屋敷を建てて庭園を築いたこと。その跡地が玉藻池である。当時とほとんど変わらないと言われる風景はシンプルであり、質素。ともすれば、豪華な屋敷を建て、木や石に細工を凝らすことで民を消耗させてしまう庭園づくりだが、内藤家は謙虚だった。贅沢を好まず、100年以上かけてゆっくりと景観を整え、派手に遊ぶこともしない。むしろ、民を庭園に招きいれてともに風景を楽しんだという。やがて、内藤家は信州の高遠城主となり、この地は別荘となった。その時代の縁だろう。このあたりには「高遠彼岸(タカトオヒガン)」というサクラが植えられている。庭園のはずれ、静かなこの場所はスケッチをするにはもってこいの場所である。

絵が描けなくても、風景を「言葉でスケッチ」することは誰にでもできる。目に見えるものから順番に、箇条書きでも構わない。なにがどう見えるのか。なにを美しいと思うのか。空、土、緑、風、音、光。ひとつひとつをていねいに、ときになにかにたとえてみたり、言葉でスケッチをするように文章にしてみてほしい。文脈によって思わぬつながりが生まれ、風景がいきいきと動き出すこともあるかもしれない。そうやって言葉にして見た景色は、あなただけの心象風景にほかならない。

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