この部屋にあるふたつの歌はどちらも興福寺にちなんだ歌である。

「道端に 桜咲くなり 興福寺」。読み上げるとなんの変哲もないように聞こえるかもしれないが、実はちょっとした背景がある。幕末のとある時期に、奈良を治めることになった川路聖謨(かわじとしあきら)という人物はよい政治をして、村人たちに慕われたという。その仕事のひとつが環境整備で、奈良のはげ山に植林をして緑を蘇らせ、興福寺にも桜を植えて桜の名所になったという。彼がいなければ、どうなっていたか。道端に桜が咲いているのは当たり前ではないのである。猿沢池と興福寺を結ぶ階段、その横にある看板にこの桜について詳しく記されているので探してみてほしい。

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