この部屋の窓から見える四季折々の風景を思い浮かべてみてほしい。春は奈良公園の華やかな桜を、夏は青空を映し太陽の光がきらめく猿沢池を、秋は山々の豪華絢爛な紅葉を、冬は夜明けの雪あかりを想像してみてほしい。それらの風景の根源には奈良の都の歴史があり、目の前の歌にあるように同じ風景を見てきた人がいる。
この部屋のどこかにある赤い引き戸には「天王貴平知百年」という文字が記されている。かつてその文字が甲羅にある亀がいたことから天平という元号が定められたといわれるが、それは単なる過去ではない。その歴史と今はつながっている。そのことを見つめ直してみてほしい。