トラン・リンさん
1947年、カンダル州生まれ/神奈川県在住

トラン・リンはこのカオ・クチョル(メンソール系の軟膏やオイルを体に塗ってコインで擦るマッサージ)用の古銭を12、3歳頃から持っている。トラン・リンは体調が優れない時、このコインで体を擦って回復する習慣があり、古いコインを常に手元に置いていた。サンクム・リア・ニヨム時代の時から持っている。

コインは2枚あったが、チョムカー・コー・キャンプへ避難した時、クメール・ルージュ兵がクロマーの端にあるコインを見つけた。彼らはそれをゴールドだと思い込み、彼女がそこに隠していると考えた。「それは何だ?」と聞かれてトラン・リンは「擦るためのコインです」と答えた。

彼らはそれを信じず、「ならば、なぜ銅色をしているのか」と言った。トラン・リンは「もし信じないのなら一枚取ってください。でも一枚は私のために残してください。」と答えた。彼らはひとつ取り、ひとつはトラン・リンに残した。トラン・リンはコインを布の小袋にしまい、カオイダン・キャンプへ着くと、芳香のある軟膏の缶に入れた。

クメール・ルージュ時代、具合が悪い時にはこのコインでカオ・クチョルをした。当時、香膏がなく、トラン・リンは水だけで擦るしかなかった。日本では、病気の時や体調が悪い時、彼女は医薬品を服用しても、今でもカオ・クチョルをしている。

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