楠木立成(ロス・リアセイ)さん
1960年、プノンペン生まれ/神奈川県在住

​​クメール・ルージュ時代の前、リアセイの叔母のひとりは教師をしていて小説を読むのが好きだった。叔母は小説を読むために、いつもリアセイに本を借りに行かせていた。リアセイは叔母に渡す前に毎回、それらの小説をすっかり読んでしまっていたので、彼は今でも多くのストーリーを覚えている。

クメール・ルージュ時代、ある部隊長は元学生だった。リアセイが語り聞かせに長けていることを知った部隊長は、いつもリアセイに物語を語らせた。夜勤では、クメール・ルージュは移動部隊に稲作の苗を収穫するよう命じた。だが、その部隊長はリアセイを引き留め、代わりに物語を語らせた。

一晩中、部隊長に物語を語り聴かせた後、米のおこげをひと片もらった。日中は普通に働き、夜は物語を聞かせる。時々、移動部隊は遠くの作業を割り当てられたが、その部隊長はリアセイが語り聞かせに来られるように、いつも彼を協同組合の近くで作業をさせた。しばらくして、その部隊長は別の地域へ異動した。恐らく殺されたのだとリアセイは思っている。

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