都会の暮らしを 見つめ直して見る

NTTドコモ代々木ビル。通称、ドコモタワー。高さは都庁とほぼ同じ約240m。鉛筆のように先に向かって尖っているが、よく見ると段々になっているのが見える。実はこの段差の部分にパラボラアンテナが乗っている。あちこちにあるドコモビルと電波を送受信するためのアンテナで、これを高いところに置く必要があった。そのために塔のような建物にする必要があったのだ。ちなみに、頂上に見える「赤白」の棒はアンテナではない。「クレーン」である。パラボラアンテナの位置を調整するときに使われるという。また、ライティングにも秘密がある。「傘が必要かどうか」で色が変わるのだ。オレンジ色に光っていたら「傘が必要=雨」。白色なら「傘が不要=晴れ」とのこと。

あなたにとって、この塔はなにを象徴する存在だろうか。彼にとって長いあいだこの塔は、この庭園が都会にあることを嫌でも思い起こさせる存在だった。どこまで行っても、この塔が視界にはいってくる。都会から逃れたいのに逃れられない。国家に守られ、会社に飼われ、そうすることでしか生きていけないとらわれの自分。そんな気持ちを象徴するものだった。だから、彼は旅に出た。ひとりでも生きていける人間になるために。でも、どれだけ旅をしても、ユートピアなんてありはしなかった。結局、場所なんてどこでもよかったのだ。歩き続けること、旅の途中であることにこそ意味はあったのだ。当たり前の話に聞こえるかもしれない。でも、それを自らの体験を経て知ったことが、旅の意味だった。そして、それを認めることができたとき、彼は塔の存在を忘れることができたのだった。

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