地面の色が変わったら「小浜西組」と呼ばれる城下町のはじまりです。古い町家を見つけたら玄関のマークに注目してみましょう。たとえば、ここには井戸の「井」という字の中に、数字の「二」というマークが記されています。これは、この家の中に2つの井戸があることをあらわしています。また、井の中に何も書かれていなければ井戸は1つ。井の中に「泉」というマークがあれば、家の中に湧き出す泉があることを示しています。つまり、小浜は食の根本となる水があちこちで湧き出す港町なのです。

というのも、若狭湾は日本海側では珍しいリアス海岸。海と山が近いため、森から栄養満点の地下水が若狭湾にも湧き出しています。この森の湧き水を求めてプランクトンが集まり、そのプランクトンを求めてたくさんの魚が集まってくる。いわば若狭湾は天然の生簀のようなものなのです。

そして、若狭はその水をも都に送り届けてきました。それが、奈良の東大寺で1300年続く「お水取り」という儀式の、その水を、若狭から運び続けてきたという「お水送り」。この儀式は国家の繁栄を願うもの。都の人たちは繁栄の源として、食の根本となる水を、それも海の恵みが湧き出す若狭の泉を求めたのかもしれません。

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