海鼠みたいな模様だから海鼠壁。どうして漆喰を塗るのかといえば、火事の炎を防ぐため。というのも、熊川は風の通り道。強い風が吹き抜けることが多く、火事になると火が走る。つまり、すごい勢いで火が燃え移っていきます。
江戸時代には10年に1度ぐらいの頻度で火事が起きていました。だから熊川の人たちは「家は一夜の松明だ」、家はいつかは燃えてしまうものだと言って、家を豪華にしつらえることはしませんでした。だからでしょうか。宿場町といえば、立派な建物が立ち並ぶところもありますが、熊川では素朴な美しさが見られます。
火事に対する注意は今も。夜になると「チリンチリン」と火の用心の鐘の音が聞こえてきます。それに、災害に強いのはお祭りがあるところ。いざというときに指揮を取る人があらわれ、町がひとつになれるからです。熊川では江戸時代からのお祭りが今日まで受け継がれています。
その成果と言えるでしょう。熊川宿の端から端まで燃えるような火事はあったものの、多くは部分的な火事でとどまり、現在も江戸時代からの建物が1/3も残っているのです。