問屋であった家には馬をつなぐ「駒つなぎ」という鉄の輪があります。問屋は積み荷が集まる場所なので、たくさんの人や牛馬が集まりました。ただし、仕入れて卸すだけではありません。ほかにもいろんな商売をしていました。たとえば、葛。

京都では熊川の葛が高く評価されていました。熊川の冷たいきれいな水で寒ざらしすることで、粘りや透明度の優れた葛粉ができるのです。葛は古くからお菓子の原料や、薬としても重宝されました。葛根湯といえば、聞いたことがある人もいるでしょう。しかし、熊川の茶屋で食べられたかといえば、そうではありません。

葛は原料となる葛の根を収穫するのが大変です。根っこといっても木のように太いのですから。それを山から掘り出して持ち帰り、寒い冬に熊川の水に何度もさらし、葛粉になるのは総重量のたったの4%。とても貴重なもので、ほとんどが京都に運ばれました。一方、熊川で食べられたのはアクの強い「カネ」と呼ばれる苦い葛。それでも胃腸の薬として重宝されたようです。

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