風景の中にある 生と死を見つめる

新宿御苑で最も高い木は46mのモミジバスズカケノキ。略して「スズカケ」。鈴のような実がなることから、そう呼ばれている。初期に植えられたとされ、新宿御苑の中でも最も古い歴史がある。迎賓館や皇居をはじめ、街路樹で見かけることが多いスズカケも、ここで育てられた苗から全国に広がっていった。ちなみに、新宿御苑で最も太い木もスズカケ。巨大さのあまり、その重みに耐えられなかったのか、台風に負けて折れてしまったスズカケもある。包帯が巻かれているのですぐに見つかるだろう。その傷口を見てみると、太い幹の中身がすっかり空洞になってしまっていて痛々しい。それでも、死なない限り何度でも、スズカケはその空洞を埋めるように根をはって再生していくのだという。

木は生きているのだろうか? そもそも、木が生きているとはどういうことなのだろう。「細胞分裂をしている」という意味でいえば、年輪の一番外側と樹皮との境目。そのあいだの数ミリだけが生きているという。ある意味では、その数ミリさえ残されていれば、生き続けることができるのだ。もしかしたら人間も同じかもしれない。先祖が積み重ねてきた年輪の一番外側に、今のぼくたちは生きている。そして、ぼくたちの年輪の上に子どもたちの年輪が重なり、生き続けていく。そう考えてみると、ぼくたちは「人間という木」の一部なのかもしれない。

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