天理大学附属天理参考館

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Introduction

祈りは、手垢にまみれている

きれいなものを集めるな。
手垢にまみれたものを集めろ——。
今から100年近く前、一人の男がそんな言葉を残しました。天理参考館の創設者、中山正善。彼が集めようとしたのは、美術品でも、宝物でも、権力者の遺産でもありませんでした。市場の看板、農民の鍬、漁師の網。誰かが毎日使い、触れ、汚した道具たち。歴史の教科書には決して登場しない、名もなき人々の「生きた痕跡」です。
この館には現在、約30万点の資料が眠っています。それらをひとつひとつ眺めていると、ある問いが浮かんできます。文化は違う。時代も違う。言葉も、神様の顔も、祈り方も、ぜんぶ違う。それなのになぜ、人間はいつも同じように手を合わせているのでしょう。
この館を歩くことは、その問いをたどる旅です。答えはガイドが教えてくれるわけではありません。でも、旅の終わりに、あなたはきっと何かに気づくはずです。ガラスケースの向こう側に並んでいるのが、遠い異国の「珍しいもの」ではないということに。


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