牛つなぎ石には、次のような伝説が伝えられている。戦国時代、武田信玄が松本を支配していた頃、信玄の領地は海に面しておらず、他の大名から塩の供給を止められ窮地に陥った。しかし、このことを知った越後の戦国武将、上杉謙信は、「庶民を苦しめるのは人の道から外れたことだ」として、敵である信玄の領地に塩を送った。この逸話から「敵に塩を送る」ということわざが生まれた。
糸魚川から大町を通り、松本へ塩を運んできた牛をつないだ石が「牛つなぎ石」と呼ばれるようになった。謙信の行いを讃えて「塩市」―「初市」が始まったとされる。明治時代になると「塩市」は、当時松本で飴の生産が盛んだったこともあり「あめ市」へと変わった。現在「あめ市」は1月の第2土日に開かれ、飴やだるまの縁起物が売られ、多くの人で賑わっている。
牛つなぎ石を正面に、右後ろを振り返ってみよう。道の向かい側にある「高美書店」は、江戸時代に創業し、200年以上続く書店だ。江戸時代の名残が、このように現在まで続いている。