ここで一つの逸話を紹介したい。戦国時代、大坂夏の陣でのことだ。松本城主になる前の戸田康長が闇夜の中で敵と戦っていると、溝の中に落ちてしまった。それを見ていた板橋兵左衛門という武士がすぐさま主人を助けようとしたが、溝の中は暗く、どちらが自分の主人かわからなかった。身動きできずにいると、突然火の玉が現れ、明るく照らした。不思議な光により、兵左衛門は敵を討ち取り、主人を助けることができたという。それ以来、板橋家は夜光稲荷として邸内に祀った。板橋家がこの地を離れた時、夜光稲荷は百瀬家に御遷座された。この伝説に似た話は東町に江戸時代から続く老舗の味噌屋「萬年屋本店」にも残されている。