利晶の杜の近くには、けし餅を扱う和菓子屋がある。ここで甘いものを食べてひと休みしていこう。南蛮貿易により日本にやってきた芥子の実を使ってつくられた、けし餅。千利休が好んだことから、茶菓子として広く知られるようになったと言われている。
実は芥子は少量のアヘン成分を含んでおり、南蛮貿易ではモルヒネなど鎮静剤の原料として輸入されていた。もちろん、けし餅にはそういった危険な成分は入っていないので安心して食べてみてほしい。芥子の実のプチプチとした食感と、柔らかなお餅が相まってとても美味しい。
しかし、なぜ芥子が必要とされたのか。それは時が戦国時代であったことと深く関わっている。怪我の治療を行う際や、人を殺めて興奮状態に陥った兵士の鎮静剤として使われていたのだ。実はカフェインが含まれているお茶も、城攻めのときには欠かせない薬であった。夜襲に備える際の目覚まし代わりに、そして戦意を高める興奮剤として重宝されていた。
しかし戦乱の世が終わると、嗜好品として愛されるようになり、今日まで続いている。鉄砲に使われた火薬は花火になり、毒ガスは農薬になった。戦争が新しい産業を生みだすこともあるのだ。堺では刀鍛冶が大阪の食を支える包丁をつくるようになる。それは、黄金の日日が終わった後日談である。