地元でしか味わえない朝ごはん、 搾りたての極上豆乳を求めて

《Traveler’s eye》

眠気の抜けないまま、小さな豆腐屋の扉を開ける。
とたんにフワッと湯気の熱気と香ばしく柔らかい豆乳の香りに包まれた。
深く息を吸い込むと身体の芯が温まり、かすかに空腹を覚える。

「おはようございまーす!」

スタッフの女性の声が朗らかに響く。
直後にNeighborsが「マイカップ」を手に美濃屋を訪れる。
和服を着たお年寄りの姿に、スーツ姿の男性も。

「ここの豆乳を飲まないと一日が始まらないって常連さんも多いんですよ」

スタッフの女性が豆乳が入ったカップを差し出してくれる。

顔を近づけた瞬間に包まれる甘い香り。
生クリームのような口当たりと豊かな風味。
これが豆乳だろうか、と驚いてしまう。

さらに豆乳にニガリを加えたばかりの寄せ豆腐もオススメだという。こちらも一口。ほのかに温かく柔らかい、濃く豊かな大豆の旨みが広がる。

「ゆっくり飲んでいってくださいね」

スタッフの女性の口ぶりに美濃屋の豆腐への自負と地域への愛着が滲む。

Travelerから、Neighborへ

100年もの間、同じ毎日を繰り返してきた美濃屋。
そのお店を愛し、通い続ける隣人たち=Neighbors。
その光景を目の当たりにしたあなたは、
深川・清澄白河のNeighborsに一歩踏み込んだことに気がつくだろう。

《Neighbor’s eye》

眠気の抜けないまま、小さな豆腐屋の扉を開ける。
とたんにフワッと湯気の熱気と香ばしく柔らかい豆乳の香りに包まれた。
深く息を吸い込むと身体の芯が温まり、かすかに空腹を覚える。

森下にある「美濃屋」。
ここは、父娘2人で切り盛りする、昔ながらの豆腐屋。
豆腐屋の朝は早い。朝4時半に起床。5時には代々続く地釜に火が入る。
前夜から水に浸した大豆をすりつぶし、間髪入れず熱していた地釜で茹で上げる。
その一瞬の見極めは真剣勝負だ。
そして、朝9時。豆腐が水中で軽やかに切り分けられ、店に並んだところで開店の時間だ。

「おはようございまーす!」

4代目、高橋ゆりえさんの声が朗らかに響く。
開店直後からNeighborsが「マイカップ」を手に美濃屋を訪れる。
和服を着たお年寄りの姿に、スーツ姿の男性も。
オフィス街にほど近い下町だけに年齢層も見た目もさまざま。
皆のお目当はまだほんのり温かみが残る豆乳だ。

「ここの豆乳を飲まないと一日が始まらないって常連さんも多いんですよ」

高橋ゆりえさんが豆乳が入ったカップを差し出してくれる。

顔を近づけた瞬間に包まれる甘い香り。
生クリームのような口当たりと豊かな風味。
ほんとうに、これが豆乳だろうかと驚いてしまう。
温かい豆乳が頂けるのは、冷蔵庫に入れるまでの9時頃まで。
朝一番の出来立てを味わうのは、隣人たちだけが知っている贅沢なのだ。

さらに豆乳にニガリを加えたばかりの寄せ豆腐もオススメ。
こちらも一口。ほのかに温かく柔らかい、濃く豊かな大豆の旨みが広がる。

「ゆっくり飲んでってね」

舌鼓を打つ私をよそに、父娘は息をつく間もなく、次の作業に取りかかる。
作業をしながらも江戸っ子らしくチャッチャと歯切れの良い口調で説明してくれる。
木綿豆腐、油揚げ、がんもどき…どれも美濃屋の看板メニューだという。
歴代の定番に、ゆりえさんが開発したメニューも加わる。
春には桜の塩漬けの寄せどうふや、秋のぎんなん、マツタケなど季節の素材を練りこんだ変わりがんもどき、豆そのものの味を楽しむ煮豆。隣人たちも新しい味を楽しみに待つ。

お目当ての豆腐ができあがる時間をNeighborsは知っている。
その時間帯に合わせて、彼らは店を訪れる。

「近所にスーパーができても『やっぱり美濃屋のお豆腐が美味しいわ』と通ってくれる常連さんがいるから商売を続けていられる」

ゆりえさんの口ぶりに美濃屋の豆腐への自負と地域への愛着が滲む。
美濃屋の豆腐に惚れ込んだ新橋の料理屋に配達を請われたこともあったが、ご近所さん分の豆腐を作る時間が無くなるからと断った。
結果、その料理屋の主人はキャリーケースを引いて、毎日ここまで通っているそうだ。

「最初は全然、家を継ぐつもりはなかったんだけど…」

そう笑うゆりえさんは大学を卒業後、一般企業に就職。
しかし歳を重ねる父親を気遣い、家業に戻り落ち着いた。

休日を縫っては美味しいと評判の豆腐屋や大豆の産地を訪ねて、全国を巡る。

「大豆の産地ごとの味わいはもちろん、毎日ちょっとの差でー数秒の茹で時間や水の加減、ニガリを豆乳
に混ぜる際のほんの強弱でー豆腐の風味や舌触りが変わります。昨日の豆腐は良かった、イマイチだったって、やっぱり常連さんには分かるんですよね。」

今日もこうして、
父娘二人三脚、おいしい豆腐を提供している。


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店名:美濃屋
住所:東京都江東区新大橋3-5-4
営業日:月曜日-土曜日 9:00am-6:00pm
定休日:日曜日・祝日
URL: https://www.facebook.com/pg/tofuminoya/
☎︎ +81 3-3631-4646
※月1回程度(不定期)、朝8時から仕込みの見学会が開催されている。
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