1杯のコーヒーが、心の交差点になる。 わずか6坪のコーヒースタンド

《Traveler’s eye》

すっかり深川ワイナリーに長居したあと、ゆっくり自転車を清澄白河方面に走らせる。

大通りから中に入った、川沿いにブルーボトルコーヒーが見えた。
サンフランシスコ対岸のオークランド発祥のブルーボトルコーヒーは「(オークランドのように)ゆったりとした空気が流れ、地元の人たちの日々の営みがある」と、日本初上陸の場を清澄白河に定めた。

いまや「コーヒーの街」として注目を集める清澄白河の代名詞的存在でもある。

Travelerから、Neighborへ

清澄白河といえば、ブルーボトルコーヒー。そうイメージする旅人は多い。
しかし、周りにも目をこらしてみよう。
焙煎機の周りにうず高く積まれた麻のコーヒー豆袋、壁面に所狭しと並ぶスケートボードに、エキゾチックな面やヘヴィメタルのポスター。
そんな不思議な店に集う隣人たちを見かけるかもしれない。

《Neighbor’s eye》

すっかり深川ワイナリーに長居したあと、ゆっくり自転車を清澄白河方面に走らせる。

大通りから中に入った、川沿いにブルーボトルコーヒーが見えた。
サンフランシスコ対岸のオークランド発祥のブルーボトルコーヒーは「(オークランドのように)ゆったりとした空気が流れ、地元の人たちの日々の営みがある」と、日本初上陸の場を清澄白河に定めた。

いまや「コーヒーの街」として注目を集める清澄白河の代名詞的存在でもある。

しかし、今日のお目当のコーヒーショップはブルーボトルではない。
ブルーボトルコーヒーの並び、すぐ先の小さな交差点にある「ARiSE COFFEE ROASTERS」。

わずか6坪の焙煎所兼コーヒースタンドは、店内の3分の1ほどを焙煎機と麻のコーヒー豆袋が占め、背後の壁にはスケートボードが並ぶ。
手前のベンチには数組の人が寛いでいる。

「こんにちは。今日は12種類の豆を取り揃えていますよ。」

スタンド奥から、にこやかに声をかけてくれるドレッドヘアの男性が、焙煎士 林大樹さんだ。
アパレル会社から、もっと深くライフスタイルに携わる仕事をしたいと焙煎士になったのは17年前。
以降は大手焙煎会社で焙煎士の経験を積む。
転機は清澄白河での焙煎工場の立ち上げに携わったときだった。
木場公園にある東京都現代美術館を訪れたついでに、テイクアウトのコーヒーを買っていくお客さんたちから「この近所で美味しいレストランはありますか?」「このギャラリーはどう行きますか」と街について聞かれることが多かった。裏方として焙煎を続けてきた林さんは表に出て、街の案内をしながら、お客さんとダイレクトに接する楽しさを知った。独立を考えた林さんが、場所に清澄白河を選んだのは自然なことだった。

「気になる銘柄はありますか?ウチのお勧めはこのドミニカ・プリンセサワイニー。いちごジャムのような香りと甘さがありますよ。」面白そう、と勧められるままに頼んでみる。他のコーヒーボトルにも中米、アフリカ、インドネシア、タイの産地が並ぶ。横のベンチに腰をかけると、向かいの人と目が合い軽く会釈する。途切れることなく、「お、こんちはー」「今日は何飲もうかな」と常連らしき人たちが訪れる。カジュアルな服、カメラバッグを持った人、作業着の人、果ては、近隣の寺に墓参りにきた喪服姿のお年寄りまで多種多様だ。

穏やかな昼下がり。林さんが美濃焼のドーナツドリッパーでコーヒーを淹れてくれる間に世間話に花が咲く。
なんとなく道行く人を眺めながら、ときたま店内の人たちとひと言ふた言、会話をする。沖縄のコーヒースタンドに隣町の新店、プラモデルの懐かし話に夕方の天気と焙煎タイミングの関係まで、雑多に交わされる自然体な雰囲気がなんとも言えず心地いい。1時間ほどの間にも旅行バッグを引いた台湾人が道を尋ね、地図を片手にコーヒーをオーダーするアメリカ人カップルが壁のブラジルSEPULTURAのポスターを見て歓声をあげる。ひとつひとつ丁寧に答える林さんの姿もなんとも楽しげだ。

「この店にはね、海外からの同業者もよく視察に来てるの。」隣の常連さんらしき人が、ちょっと誇らしげに教えてくれた。まるで街の人たちの交差点であり、サロンのようなこの場所は、地域への愛着を育んでくれる場所でもあるようだ。

ごちそうさまですと声をかけ、ARiSE COFFEEを後にした。

ーーーーー
店名:ARiSE COFFEE ROASTERS
住所:東京都江東区平野1-13-8
営業時間:10:00〜18:00
定休日:月曜日
URL:http://arisecoffee.jp/
TEL:+81 3-3643-3601
ーーーーー

Next Contents

Select language