鳥の声に海の音。 世界の音が詰まった、カフェ兼ギャラリースペース

《Traveler’s eye》

今夜、ピアノのライブ演奏が行われるカフェにはまだ人がまばらだった。
元倉庫を思わせる高い天井と剥き出しのコンクリート。
棚には海外のデザイン誌、陶磁器や雑貨、CDが並んでいる。Exhibitの名の通り、展示もしているのか。
ライブのお供にスプリツァを注文し席を決めると、ギャラリーを眺めてみる。

そのなかに一つ、丸くくり抜かれた不思議な木箱が置かれている。何だろう──。
不思議に思って眺めていると、ドリンクを持って来てくれた細身のマスターが説明してくれた。

「あれは僕が世界中を旅したときに、何かこの記憶を残せないかなと思って、写真を撮る代わりにその場所の音を録音して来たんですよ。よかったら聴いてみてください。」

写真を撮る代わりに音を録音する──?
彼の言葉を反芻しながら、箱に近づき、そっと頭を差し込んでみた。
(外から見るときっと変な光景だと思う。)

ザーッと遠く微かに音が聞こえる。
遠くに鳥の声。
これは…?箱から頭を出し、ふと横を見るとSound Trip#4 と書かれた音源リストがあった。
「上海のとある公園の鳥たち」、「ミラノ、ドゥオーモ(ミラノ大聖堂にて)」、「ベトラ(ヨルダン)のホテルでのコーラン」など、各地の風景が並ぶ。
もう一度、頭を箱に入れ、耳を澄ます。こんな旅の仕方もあるのか──。

店内が少し賑やかになって来たようだ、席に戻ろう。

「すみません、こちら相席よろしいですか?」

落ち着いた感じの女性と同席になった。
そして、また一人で訪れたらしい男性も。
初対面同士の相席ではあったが、不思議と気まずい雰囲気はない。
2、3言、言葉を交わすうちにピアノ演奏が始まった。

Travelerから、Neighborへ

旅をしているのに、ひとりではない心地よい温度感。
耳に残るのはピアノの音色と、箱のなかで遠くに聴こえた遠い異国の風景。
何重にも重なる幾つもの日常を、受け止めてくれるNeighborsがここにいる。

《Neighbor’s eye》

会場となるカフェにはまだ人がまばらだった。
元倉庫を思わせる高い天井と剥き出しのコンクリート。
ここ清洲寮は1932年に建設された集合住宅。
東京大空襲のときも住民が近所の小学校プールからバケツリレーをし、延焼を免れたらしい。
棚には海外のデザイン誌、陶磁器や雑貨、CDが並んでいる。
Exhibitの名の通り、展示もしているのか。
ライブのお供にスプリツァを注文し席を決めると、ギャラリーを眺めてみる。

後藤寿和さんと池田史子さんのデザインチームgift_は、商業施設やオフィスなどの空間デザインや家具・ツールのデザイン、地域性やコミュニティを活かすための企画や活動など幅広く活動している。

そして、彼らの実験場でもあるこの場所はカフェの定休日には彼らのスタジオや工房になる。
そして金曜夜には小屋バーと名付けられた参加型のトークイベントが行われたり、地域の若手クリエイターの作品の展示やライブ音楽の演奏場となったり、地域内外の人が行き来するサロンとなっている。

そのなかに一つ、丸くくり抜かれた不思議な木箱が置かれている。
何だろうー。不思議に思って手を眺めていると、ドリンクを持って来てくれた細身のマスター 後藤寿和さんが説明してくれた。

「あれは僕が世界中を旅したときに、何かこの記憶を残せないかなと思って、写真を撮る代わりにその場所の音を録音して来たんですよ。よかったら、聴いてみてください。」

写真を撮る代わりに音を録音する──?
彼の言葉を反芻しながら、箱に近づき、そっと頭を差し込んでみた。
(外から見るときっと変な光景だと思う。)

ザーッと遠く微かに音が聞こえる。
遠くに鳥の声。これは…?

箱から頭を出し、ふと横を見るとSound Trip#4 と書かれた音源リストがあった。
「上海のとある公園の鳥たち」、「ミラノ、ドゥオーモ(ミラノ大聖堂にて)」、「ベトラ(ヨルダン)のホテルでのコーラン」など、各地の風景が並ぶ。
もう一度、頭を箱に入れ、耳を澄ます。こんな旅の仕方もあるのか──。

もともとgift_は恵比寿を活動拠点にしていた。
東京の西から東へ、オフィスを移動することになったきっかけは、セントラルイースト東京と呼ばれる、東日本橋界隈でのアート活動だった。
シャッター通りや空き物件が増えたエリアをリノベし、アート展示やイベントを仕掛ける。
アート活動を通じて、界隈に人の流れが生まれ、エリアに住み着くクリエイターが現れた。
数年をかけて、ジワジワと街が生まれ変わることを体感した。

そして、次に気になったエリアが清澄白河だった。
隅田川を隔てて、都心にほど近い、しかしゆるやかな空気の流れと人々の日常の営みがあった。
そして立ち並ぶ空き倉庫とシャッター街。
東日本橋で彼らが体感したように、これから街が息吹きを吹き返す予感があった。
いまでは彼らは東京での活動の傍ら、縁あって、大地の芸術祭の里・新潟まつだいでも『山ノ家カフェ&ドミトリー』を運営している。
東京と新潟の2拠点生活を「ダブルローカル」と名付け、ふたつの「日常」をシームレスに送っている。

店内が少し賑やかになって来たようだ、席に戻ろう。

「すみません、こちら相席よろしいですか?」

落ち着いた感じの女性と同席になった。
そして、また一人で訪れたらしい男性も。
初対面同士の相席ではあったが、不思議と気まずい雰囲気はない。
二、三言、言葉を交わすうちにピアノ演奏が始まった。

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店名:gift_lab GARAGE Lounge&Exhibit
住所:東京都江東区白河1-3-13 清洲寮102
営業時間: 水曜日-日曜日 12:00pm-7:00pm
定休日:月曜日、火曜日
URL:http://www.giftlab.jp/garage/
☎︎ +81 3-3630-1201
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