馬返しには石造りの鳥居がある。これより先はいかなる者も馬を降りて徒歩で登らねばならず、音が鳴るような騒がしい物は禁止とされていた。富士講の人たちは気を引き締めて、いよいよ勾配が険しくなる山道を登りはじめたことだろう。
鳥居の前には猿の像がある。伝説によれば、紀元前301年に富士山は一夜にして姿をあらわした。それは庚申(かのえさる)の年のことであり、猿は富士山の使いであると考えられた。そこから60年に一度の周期でやってくる庚申の年は「ご縁年」と呼ばれ、ご利益にボーナスがあるとされていた(ちなみに次の庚申の年は2040年だ)。