赤壁で見たように、島の地表は比較的、新しい時代に噴火した火山岩に覆われている。一説には、火山岩はプツプツと小さな隙間があいているため、雨水をスポンジのように蓄える。しだいに地下へ潜りながら濾過された水は、行くところまで行くと、海水の圧力によって岩の隙間から湧き出してくる。
中でも、この「河井の地蔵さんの水」は一度も枯れたことがないといわれる湧き水だ。
どんなに日照りが続いても、逆に台風が来たあとでも、水量は変わらない。どのような経路を辿って湧き出しているのかわからないが、複雑な軌跡を辿って出てくる、まことに奇跡的な源泉なのだろう。
ぼくたちが訪れたときも、地元の方がこの水を汲んでいた。「小さい島だけど水が枯れることはないけん安心して暮らしちょる」とのことで、焼酎用の4ℓのペットボトルを2本分、慣れた手つきで汲んでいた。この湧き水は料理や飲み物に使い、米を炊いたり、コーヒーを淹れたりしてもおいしいという。
ちなみに、ここから道路を挟んで反対側にある赤い屋根の建物は「お大師参り」といわれる巡礼路のひとつ。その日は接待として「河井の地蔵さんの水」で湯がいたうどんが振舞われるという。