知夫里には「お大師参り」という風習がある。それは、四国八十八ケ所のような巡礼の旅で、毎年、弘法大師の命日とされる旧暦の3月21日(4月末から5月頭)に島の各地区にあるお堂を巡る。巡礼は「右まわりで」と言われ、郡から歩きはじめると「郡→大江→仁夫→古海→来居→薄毛→多沢」と巡る。各地区のお堂では地域のお母さんたちが料理で接待してくれるため、ごちそう目当てでお参りする人も多いという。
地元の人からすれば「お大師参り」は春先に行われるので、新しく島に来た人を案内するのにも都合がよい。島の新人はたいてい1ヶ所目のお堂で食べ過ぎてしまい、2ヶ所、3ヶ所目になるころには「もう食べられません」と音を上げることになるそうだ。
こうした「お大師参り」の風習からだろう。各地区のお堂は仏像があるお寺でありながら、集会所を併設しており、キッチンも完備している。
また、お大師参りとは別に「蛇巻き」という風習もある。詳しくは「大江のお堂」で紹介しよう。