ワカメのシーズンは「2月末から5月の頭」。もしも、その時期に知夫里に来ているのであれば、試してほしいことがある。知夫里は外から来た漁師さんが「こんなに天然のワカメが生えているところを見たことがない」とビックリするぐらいの場所。そこで、ぜひ島のどこかでワカメを探してみてほしいのだ。

この場所で話を聞かせてもらったのはワカメ工場を営む徳田さん。なんと、これまで役場で働いていたが、親の後を継いでこれから漁師になるという。


──ワカメはどこで採れるんですか?

知夫里ならどこでも採れますよ。磯場や岸壁のところなんかは波打ち際のギリギリまでびっしり生えてたりしますから。来居港のターミナルにある岸壁にすら生えています。僕も小さい頃、採って遊んでいたんです。

──知夫里のワカメにはどんな特徴があるんですか?

「天然」というところですね。「肉の厚み」が全然違います。このあたりは海水濃度が高いらしく「味が濃い」という話もあるみたいです。

──天然のワカメはそんなに珍しいんですか?

今はほとんど養殖ですからね。天然のワカメは採るのが大変なんですよ。漁の方法としてはサザエと同じ。海の中を箱メガネで覗きながら、長い鎌を下ろしていくんです。それで、まずワカメを刈りますよね。刈ったワカメをその鎌に引っかけて引き上げるんです。潮の流れが速いところだと、刈った途端にワカメが逃げてしまいますけん。そこが、なかなか難しいんですよ。

──今からはじめるのは大変そうですね。

サザエと違ってワカメは動かないし一面にびっしり生えてるんで、そこに錨を下ろしてひたすら刈る。そうして丸坊主にしていくような作業なんで、操船技術は必要ないんです。けど、慣れるまでが大変ですね。知夫里も高齢の漁師さんが多いので、続けられるかといえば、後継者がいるかどうかにかかっているんです。

──だからこそ、徳田さんが今から漁師をやるんですか?

はい、やってみようと思ってます。

──この工場でワカメを洗って干すわけですか? なぜか洗濯機がたくさんありますね。

採ってきたワカメは、まず水道水で塩抜きをしたあと、洗濯機で脱水をかけるんです。そこからさらに水分をとばすために、ネットを張ってその上にワカメを一枚一枚、並べていく。そこにドライヤーみたいな機械で温風をあてて乾かしていくんです。天日干しもできますが、効率が良いとはいえないですね。ワカメは漁期も限られてるんで、天気がいい日が続かないと干せません。そういう意味でも機械のほうが安定します。それに意外と機械のほうが、発色もよかったりするんですよ。とてもきれいなグリーンになります。

──漁期は「2月末から5月の頭」ですよね。漁期以外はなにをやるつもりなんですか?

それこそ、サザエを採ったり、いろんなことを複合的にやっていこうと思っています。

奈良時代の書類に「智夫」の名が記されている。その書類は税務的なもので知夫里は奈良の朝廷に「ワカメ」を納めているという記録であった。

ワカメ漁はそれほど古くから続けられてきたわけだが、知夫里島のまわりは水深が浅いエリアが広がっているため、昔からワカメ、サザエ、アワビなどの浅い海での漁が盛んだった。これを「かなぎ漁」と呼び、海の中を目視しながら獲物をゲットする原始的にして現在も大きく変わっていない漁法である。

ほかにも手漕ぎの船によるイカ漁や一本釣りもおこなわれてきたが、エンジンの船になるなど漁船が進化すると遠くまで漁にいけるようになった。すると、出稼ぎも増え、どうせ遠くまで漁に行くならと知夫里より便利な土地が見つかるものなのか、知夫里の漁師の数は減っている。

しかし、「かなぎ漁」においては比較的はじめやすいこともあり、従事する人の数は安定しているという。

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