知夫里島の北東にある赤灘は、となりの西ノ島にいちばん近い場所。わずか700mほどしか離れておらず、太古の昔に知夫里島と西ノ島がつながっていたことを感じさせる場所である。
現在、そのわずかな距離をつないでいるのは「電線」である。知夫里島に発電所はなく、西ノ島の発電所から電気をもらっている。つまり、この電線が切れたりすれば、知夫里島のすべての電気が止まることになる。
昔は台風などで停電になることも多かった。停電になると復旧まで3日はかかるため、島の子供たちは商店の親父さんに「アイスぜんぶ持っていっていいけん、友だちみんな連れてこい」と言われたものだという。
最近でこそ滅多に停電は起きないが、島に台風が来るとわかれば、電力会社の職員が本土からやってくる。そして、万が一に備えて待機していてくれるのだという。仕事とはいえ、わざわざ台風が来るとわかって島に渡るその心持ちやいかに。
鉄塔を前にぷつりと途切れるこの道は、彼らが電線をメンテナンスするために敷かれた道であるのかもしれない。