ようこそ、私たち妖怪の世界へ。

私がなにものかって?
そのうちわかる。
でも今は見えない。
もともと、私たち妖怪は見えないものだった。

古代から、日本人は見えないものたちの存在を信じてきた。

だれもいない水辺に聞こえる足音。 
木の陰から聞こえてくるおしゃべり。
ざわめく森。流れる川や海。
ただそこにある石。
言葉を持たない動物。
匂いや音。風や星の動き。

人間を取り巻く森羅万象には魂が宿っていると考えていた。

何もないところから聞こえるものおと。
そこには誰がいると思う?
夜中なのに山から聞こえてくる木を伐る音。
誰のしわざだと思う?

家に住み着く精霊がいる。
夜の世界から山に降りてきた天狗が、木を倒している。

古代の人たちは身の回りに起こる奇妙な出来事、説明のつかない現象は、目に見えない怪しい存在が人知れず動いていることで起きているのだと考えた。

その見えない、怪しきものたちが、わたしたち妖怪の先祖。

あそこの流木、じっと見つめてたら、顔に見えてこない?
いまにも口が動いて何かを語り出しそうな気がしない?

ね、感じるでしょ。神秘的で怪しいモノの気配。

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