日本人が見えないものの存在を信じていたのは、なぜだと思う?
古代から日本人は、自然の恵みに生かされてきた。あらゆる自然は人々の日々の営みを支え、恵みをくれる神様だった。
日本の神話は八百万の神の物語。八百万とは数え切れないほど多いということを意味するの。草木や水、石や動物、言葉にも精霊が宿ったとされているわ。
でもね、同時に日本人にとって自然とは脅威だった。海底火山の上に立ち、海と山に囲まれ、その国土のほとんどは鬱蒼とした森林。地震、台風、山火事、洪水、この国にはあらゆる自然災害が起こる。
想像してみて。洪水で家が流されたら。疫病によって村の人たちが次々と亡くなるとしたら。深い悲しみや無力感の中で、あなたは「なぜ?」と考えたりはしない? なぜ、こんなことが起きるのか。自分の行いが悪かったのかと、自分を責める人もいるかもしれない。原因はあなたにはないのに「なにかのせい」と考えないと納得できないこともある。人のサガ。
人の力が到底及ばない天変地異を、見えなきものたちが起こしていると古代の人々は考えたわ。自然の神々にも喜怒哀楽がある。和やかな時と荒れている時がある。荒ぶる神は恐ろしい怪物に化けて、人々の生活を荒らしてゆくのだと。
だから古代の人々は、見えなきものたちを怒らせないように彼らを祀っていた。自然の恵みに感謝しながら、災いを起こさないでくださいと祈っていた。そうやって自然の中に棲む精霊や神様たちと一緒に生活をしていたのね。