もともと日本の神様は見えないもの。私たち怪しきものたちも見えない存在だった。私たちは気配で、人々の語る物語や、書物の文字の中にだけ存在したわ。
文字と絵の両方で物語を伝える絵巻がつくられるようになると、人間に恵みをあたえてくれる神様にも、人間を困らせる怪しきものたちにも、姿かたちが与えられるようになってきたわ。人間は言い伝えから私たちの姿を想像して、それを絵に表現するようになった。たとえば平安時代の人々が恐れていたオニ。人の力を超えて、人に災いを与える。人を喰い、財産を奪い、地獄に落ちてきたものを苦しめる。怪力で、勇敢で、無慈悲な存在。オニは人の業や恐れを見透かして、禍々しい角を額にたたえて、睨みつけるようなおどろおどろしい目をしていたわ。
でも時代が進むにつれて、絵巻の中には奇妙で小さくて剽軽なものたちが登場するようになった。江戸時代になると、今の時代にも知られるたくさんの妖怪が登場した。上の階で紹介するから階段を登っていって。