それは神なのか、人なのか?

エントランスホールに浮かんでいるかのように存在感を成す巨大なカヌー。
その船頭で、膝をつくようにして空を見上げている像を見つけられただろうか?
これは、ティキ。この世を創造した天空神が最初に産んだ「こども」として、ポリネシアの人々に広く信仰されている。性別はない。大きな目と膨らんだ鼻の穴が特徴的で、この顔を胎児のようだという人もいれば、死者の顔、つまり祖先の魂がこの像の中に休んでいるという人もいる。神のようでもあり、人のようでもある。なんとも不思議な存在だ。

太平洋の島々では、多くの神様が信じられているが、ティキはポリネシア一帯で、とりわけポピュラーな存在だ。その人気の秘密は、守り神としてのオールマイティさにあるかもしれない。ティキの力は超自然的で、天気、風や波、五穀豊穣や大漁、病気の回復など、人の力を超えたところにも及ぶと信じられてきた。その力が船に宿れば、船はきっと早く、安全に進む。2,000年前にポリネシア西部、現在のサモアやトンガ辺りに住んでいた人々は、このサイズのダブルカヌーに乗って、ときに数千㎞もの先の島々へと移住していった。当然ながらエンジンはない。風と波、そして見たこともない新たな島での暮らしに、彼らは自らの運命を委ねたのだ。そのような旅の中で、彼らはティキの加護と導きを願ったのだろう。

ポリネシアの人々はいまもティキを道具や家具の装飾に使ったり、小さな木彫りの像を首から下げたりしている。今を生きる彼らもまた、人生という旅の中でティキを守り神としているのかもしれない。
宝物は旅の守り神。あなたは自分の旅を見守るティキをもっているだろうか?

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