いくつものパターンがある紋章の中から地図の示すものを探しだせただろうか。ここ沖縄にはかつて女性が手にイレズミを施す「ハジチ」という習慣があった。あなたが見つけたのは、太陽をモチーフにした模様だ。一時期は禁止され廃れた地域もあるが、イレズミ、つまりタトゥーは太平洋の島々、そして沖縄においても大切な習慣として存在していた。
人が皮膚に墨を入れる理由はなんだろう。ひとつには地位の高い人が入れていたタトゥーが大衆化したという説がある。沖縄のハジチは、女性の最高権威だった聞得大君(きこえおおぎみ)に憧れて一般の女性たちが施すようになり、人生儀礼やお守りとしての意味を持つようになったともいわれている。ポリネシアでは、聖なる力を持つ人がそのパワーで誰かを傷つけてしまわないように施す場合もある。
地域によってさまざまな文脈があるが、共通していることには、タトゥーが何かしらその人のアイデンティティを象徴しているということだ。沖縄もそうだが太平洋の島々にも地域や家柄を象徴する文様がある。太平洋の島々では最初に紹介したティキなど神様の存在を入れる人もいる。タトゥーの1つ1つに意味があり、先祖崇拝、家族の歴史、個人の歴史、そして、その人のこれからの願いが込められているのだ。近年、太平洋の島々ではタトゥー文化が見直され、復活している地域もある。自分が何者かを知っていること、そしてそれを表現できることこそが宝物だと考えられているのかもしれない。