合言葉は「ケレケレ」

メラネシアのバヌアツの伝統料理、ナロットは見つかっただろうか? これは太平洋地域で広く食されているタロイモを蒸して、杵でついて粘り気を出し、伸ばしてこねたもの。これをナイフで切り分けてみんなで食べる。親戚の集まりなどで作られるご馳走だ。

このご馳走自体も島の人々の宝物には違いないが、ここではその奥にある思想を宝物として紹介したい。合言葉は「ケレケレ」。

たとえば、このナロットを作るには餅つき並みの力と忍耐がいる。しかし、せっかく苦労してつくっても、近所の子どもたちが勝手に取って食べてしまうことがある。子どもたちに悪気はない。大人も必ずしも怒らない。なぜなら、それはケレケレ。そこにあるものを分け合うのは当たり前という精神があるからだ。

「ケレケレ」はフィジーの言葉だが、メラネシアでは、この考え方が広く浸透している。もしよければ「ウミガメを食べる」という動画を見てほしい。亀は島の人々にとってのご馳走で、島の誰かが亀を捕まえてきたら、それは全員に分け与えられる。亀を捌く映像は少々グロテスクかもしれないが、そこに映る人々の心の底からの笑顔には、分け合うことの尊さを感じてもらえるのではないだろうか。

島の人々が分け合っているのは何も食べ物だけではない。「ケレケレさせて」と言って、誰かのキッチンを使ったり、車のタイヤを借りたりすることもある。その最たる例は子どもだ。余裕のない家族が親戚など別の家で子どもを育ててもらうのもよくあること。養子に出すのではなく、子育てを分け合っている。つまり助け合っているのだ。

ケレケレは単純なシェアではなく、助け合いの精神。そして助け合いといえば、沖縄にも地域の助け合いの精神を表現する「ゆいまーる」という言葉がある。助け合う、ということは、小さな島に暮らす人々に共通する、宝物にすべき心構えなのかもしれない。

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