「九州鉄道記念館」本館は、1891年に建築された赤レンガ造りの旧九州鉄道本社社屋(後に鉄道院、鉄道省、国鉄、JR九州が使用)を転用している。つまり、門司の繁栄の契機となった建物がそのまま残っているのだ。
中には明治時代の客車も復元展示されている。客車の周りには当時の乗客や車掌の人形もある。ここにいれば、思い切り門司が華やいでいた時代の雰囲気に浸れるのだ。
見どころのひとつが、会館当時から展示している「キハ四二〇五五号気動車」(キハ〇七形四一号気動車)だ。戦前はクラッチで速度を変えていたそうだ。車両を連結して運転する際は、双方の運転士が合図をしながら気動車を走らせたという。
目を惹くのが前面の形状である。大きな曲線を描く6枚窓が美しく印象深い。
気動車の前で目を閉じると、私たちの先祖の姿が蘇ってくるようだ。明治生まれの人々の人生の一場面が、切り取られたような場所だ。