新入社員:
まず、環境分野からご紹介します。ただいま研究しているのは、こちらの4体の妖怪たちです。尻ぬぐい、雪女、フジツボ、草坊々(くさぼうぼう)......
とくにご注目いただきたいのがこちら、眠ってしまっている雪女のユキちゃんです。温暖化によって自分が溶けることを恐れて冬眠してしまっていると考えられています。私の見解では、むしろユキちゃんが起きてくれることで、地球の温度を下げられるのではないかと思うのですが……..
尻ぬぐい:
ねえ、そこの新人研究員さん。それはいくらなんでも安直じゃないかしら。日本では温暖化が話題だけど、いま世界が困っているのは気候変動よ。北極の氷が溶けて、砂漠は大吹雪って状態。人間の営みによって、自然のシステムがエラーを起こしてしまっているのよ。
草坊々:
えっへん、そんな人間たちを助け、緑の地球を甦らせようと、わたくし草坊々がせっせと地球の緑を増やしているわけです。気候変動を引き起こしている空気中の二酸化炭素をせっせと吸収しております!まあ、人間からは雑草だと言われて、駆除され続けていますが……でも、僕は諦めませんよ。僕の存在が地球を救いますから!ねえ、フジツボさん?
フジツボ:
草坊々、お前ってポジティブなのな。俺は、海をあんまりにも汚されるものだから、困って、海を汚す人間の体にいぼを発生させているぞ。それぐらいでしか、今のところ海の環境を守れねえ。
尻ぬぐい:
どちらにしろ、「尻拭い」よね。私の仕事だと思ったんだけど、あなたたちも働き者ね。とはいえ、私も本当は綺麗なトイレを保つことだけを仕事にしたいけど、他の尻拭いの仕事が多すぎるの...。
新入社員:
こんなふうに他の妖怪たちが賑やかにしていてくれていたら、ユキちゃん、目を覚ましてくれないかしら......
フジツボ:
いやいや、お前さんよ。 目覚めたら溶けちまうかもしれない場所にユキを起こす気か? それにユキ自身が、もっと眠りたいだけならどうする? そのユキの気持ちは取り残されていないか?
雪女:
終始無言
新入社員:
た、たしかに。ユキさんの気持ちまでは考えていませんでした......
大事なのは、ユキさんに地球の問題を解決してもらおうとすることではなく、我々が自分たち自身の問題を解決して、ユキさんが起きるのか、まだ寝るのか、選べるようにすることかもしれません…
早速メモしましたので、今後の研究に活かします。皆様も気候変動を解決する妙案が浮かびましたら、是非とも研究所にご連絡ください。続いては、経済セクションにご案内しましょう。