平日の8時30分から17時15分まで入ることができる、市役所展望台。エレベーターか階段で5階まで上がり、エレベーターの前の階段から展望台までは歩くことになる。
天気がよければ、雄大な北アルプスを背景にした松本城を見渡せる。市役所が開いている時間帯は、いつでも利用できる松本市民の憩いの場である。
ここに上ると、地上からはわからない二つのことが見えてくる。一つ目は、天守が残っている奇跡だ。城がある西側を見てみよう。ここで伝えたいのは、松本は火災が多かったということ。城下町が栄えていたことと引き換えに、千軒以上もの家が一度に焼けてしまう大火事が、何度も起こっている。松本城も江戸中期に本丸御殿が、明治初期には二の丸御殿が焼け落ちている。
展望台からは、御殿跡が見える。二つの御殿が立ち並んでいた、豪華な姿を想像してほしい。どちらの御殿も、天守と目と鼻の先だ。そんな場所で大火事があったにもかかわらず、天守は被害を逃れた。たまたま風向きがよかったのか、人々が天守だけは守ろうと必死に努力したのか。理由はわからないが、そこには特別な何かがあると思えてくる。
もう一つは、松本城がここにある必然性だ。今度は城と反対側、東側の窓から景色を見てほしい。山から放射状に平地が広がって、典型的な扇状地になっている。続いて、北側を見てほしい。こちらも扇状地になっている。つまり松本城は、二つの扇状地が交わる場所に造られている。そのため水が豊かで、広大な水堀を築くことができた。
さらに、東西南北どこを見渡しても視線の先には山がある。やはり天然の要塞であったからこそ、ここに松本城が築かれたのだと感じることができる。